只今喜一で人気の生ホタルイカは、富山のホタルイカですが
富山のホタルイカは、確かにおいしいといわれます。
地域のものに比べて富山産のホタルイカは、食べた時のプリプリ感はもちろん、見た目からしてすでにまるまると太っていて全然違うと思いますし、
実際に「富山のホタルイカ」は河岸でも別格の扱いをうけます。
このホタルイカは富山湾だけでなく、他の地域でも水揚げされて出荷されています。
なぜ、この狭い日本で、同じホタルイカなのに大きな違いがあるのでしょうか。
細かいことを挙げればきりがないそうですが、
これには大きく分けて3つの理由が考えられます。それは、
- 産卵場所までの距離が近い
- メスがほぼ100%
- 地域の主要な産業
ということらしいです。
「1.産卵場所までの距離が近い」
これには、ホタルイカで有名な滑川沖だけでなく富山湾全体にいえることですが、沿岸から約10㎞くらいで水深1,000mに達するところもあるくらい、富山湾の深海部分は深く、そして急激な高低差があります。
このため、水深200m以下を住みかとするホタルイカのような生物にとって、最適な環境でありながら、産卵場所である海岸部までの距離が近くなります。
メスは、産卵するためにたっぷりと脂肪や栄養をたくわえますが、産卵場所にたどり着くまでにそれらをかなり消費します。
つまり、産卵場所が近いということは、メスが完全にやせ細ってしまう前に沿岸へとやってくることになります。
富山のホタルイカ漁は沿岸部で行われるため、この「肉厚でぷっくりしている」状態のまま水揚げされるというわけです。
「2.メスがほぼ100%」
これは、上の「産卵場所が近い」でご説明したとおり、まるまると太ったメスのホタルイカを水揚げすることができることに関係していますが、さらにそのおいしいメスのみを捕獲することができるのが富山の特徴です。
それは「定置網」だからだそうです。
ホタルイカ用の定置網は沿岸からわりと近いところに設置するため、産卵にやってきた太ったメスだけを捕獲することができるのです。群れをなして産卵にやってくる富山湾の一部の沿岸地域でのみ成立する漁法です。
もちろん、ホタルイカにはオスもいますが、沿岸まで来ることはなく、ほとんど深海で死んでしまいます。
富山湾以外の地域でホタルイカをとるには、底曳網(そこびきあみ)で海底を根こそぎ水揚げするのが主流です。
そのため、やせたオスや、まだ太りきっていないメスが水揚げされるので、富山湾のプリプリの大きなホタルイカと比べると、どうしても小さくて細いものになります。
さらには、富山湾の定置網は産卵後に沖へ戻ろうとするメスのみを捕獲できるような場所に仕掛けがあるので、たくさん水揚げしていてもホタルイカの乱獲につながるような悪影響はまったくありません。
このように、おいしい産卵期の、丸々としたメスのみでほぼ100%水揚げできる富山湾は、最高級の品質と漁獲量を維持できるのです。
「3.地域の主要な産業」
これは、ホタルイカが単独で漁として成立するほどの漁獲がある富山だからこそですが、特にホタルイカのまちとして有名な滑川市では漁港近くに「ほたるいかミュージアム」という施設があるくらい、ホタルイカは地域の観光や産業にとって非常に主要な役割を果たしています。
富山以外で、漁はもちろんですが、ホタルイカが専門、あるいはホタルイカが中心である水産加工会社や関連会社というのは、自営業まで含めて、おそらくかなり少ないと思われます。というよりは、ホタルイカのみでは、商売として成立しないはずです。
たとえ富山県内であっても、実際にホタルイカ漁が盛んに行われている一部の沿岸地域に、ホタルイカ関連の会社や店が集中しています。
そして、そうした「ホタルイカ」というものを、単なる食材としてだけではなく、地域のシンボルや基幹産業の一つとして位置づけて、大切に育てていく。
これが、ホタルイカのブランド力や質の高さにつながっているのだそうです。
この他にも、富山のホタルイカがおいしい理由はたくさんありますが、大きく分類すると以上のようになるのではないかと思います。きっと、ずっとおいしいはずです。